
低侵襲緑内障手術について
緑内障手術をご検討の皆様へ
緑内障は早期発見・早期治療が重要な病気です。
本来は、手術など無くても生涯困らないようにコントロールするのが理想ですが、進行した状態で見つかる患者様も多く、点眼・レーザーだけでは難しいことがあります。経過から手術が必要と判断されるような場合でも、当院では患者様の生活スタイルや価値観を最大限に尊重しています。
すなわち、点眼で極力引っ張るケース、早期手術で点眼を減らすケースなど、皆様にとって最善と考えられる治療法を提案いたします。
術後の長期管理も含めて最善のサポートをさせていただきます。
当院で実施する緑内障手術は、日帰りでできるよう、低侵襲で安全性と再現性の高い手術を選択しています。
相当に進行しているか、眼圧コントロールが不良の場合は入院手術を選択しますので、その際は実施可能な施設へ紹介させていただきます。
院長は長年、緑内障を専門として研究・研鑽を重ねてきておりますので、安心してご相談ください。

緑内障とは
緑内障は、何らかの理由で視神経の寿命が短くなり、年齢に比して神経の損傷が強い状態を言います。
従来は、目の中の房水(ぼうすい:目に栄養を運ぶ液体)が排泄されにくく、眼球中の圧力(眼圧)が高くなることが原因と考えられていました。
しかし、眼圧が正常であっても緑内障が起こる場合があり、調べてみると日本人ではこの「正常眼圧緑内障」が大部分を占めることが分かりました。
ただでさえ自覚症状に乏しく発見が遅れがちな緑内障で、眼圧まで正常となると、眼底検査のないコンタクト受診や結膜炎等での受診、健康診断では見つからないことがあります。
そのため、40歳を過ぎたら一度は眼科での詳細な検査を受けることをおすすめします。

緑内障の治療
眼圧が高い緑内障はもちろん、正常眼圧緑内障でも、眼圧を下げることで病気の進行を遅らせることができると実証されています。
そして、眼圧下降以外に有効な治療法は見つかっていませんので、全ての緑内障治療は眼圧を下げる(あるいは眼圧上昇を予防する)目的で行われています。
まずは点眼やレーザーで治療を開始し、次の段階として手術治療を考慮するという位置付けです。
しかし、どれだけ眼圧を下げても、一度損傷された神経が元に戻ることはありませんので、早期発見・早期治療に勝る治療法はありません。

緑内障手術について
緑内障手術については、機序から大きく分けると、
●元々の房水の流れを良くする(流出路再建術)
●新たな房水の流出路を用意する(濾過手術、インプラント手術)
●房水が作られないようにする(毛様体光凝固術)
の3つに分類されます。
いずれもこの10年で改良が試みられていますが、当院では主に流出路再建術眼内法を実施しています。
結膜および強膜を切開する必要が無く低侵襲である点、直接に線維柱帯を観察しながら切開するため再現性が高い点が、従来の術式に比べて優れていると考えられます。
適応
- ほぼ全ての開放隅角緑内障(血管新生緑内障、ぶどう膜炎に伴う続発緑内障、などを除く)
- ステロイド緑内障、落雪緑内障、白内障合併例では特に有効
流出路再建術(線維柱帯切開術 眼内法)
房水の排出口である線維柱帯の目詰まりが原因で、薬物治療やレーザー治療を行っても眼圧下降が得られない場合に行われる手術が流出路再建術(トラベクロトミー)です。
当院では谷戸式マイクロフック、ナイロン糸を用いて眼内から線維柱帯を切り広げる手術を実施しています。
ナイロン糸は先端が鈍でかつ柔らかいため、シュレム管外壁を傷つけることなく安全かつ広範囲に切開が可能です。
これにより目詰まりが解消し、房水の流出量が増加し眼圧を下げることを目的としています。
緑内障は、手術の効果が得られても点眼不要になることは難しく、定期的な経過観察、眼圧のコントロールが必要です。
点眼薬や内服薬は正しく継続してください。
根気の必要な病気ですが、当院では術後のサポートもしっかり対応させていただきます。
緑内障についての理解を深めていただくためにも、ご不明な点、ご心配な点などお気軽にご相談ください。

手術の特徴
- 切開傷が小さいため眼への負担が少ない(低侵襲:強膜・結膜は切開しない)
- 手術時間が短い(5~15分程度)
- 線維柱帯を直接観察して切開するため、再現性が高い
- 合併症(視力低下、術後感染症など)のリスクが少ない

合併症
術後感染症
侵襲が少なく手術時間が短くても、眼科の手術では一定の割合で起こりうる重篤な合併症です。
抗生物質の投与や緊急手術(硝子体手術:眼内を洗浄する目的)で対応します。
前房出血
軽微なものを含めれば必ず起こります。ほとんどが1ヶ月程度で自然に吸収されますが、出血量が多かったり、吸収が遅い場合は追加治療を要することがあります。
術後一過性眼圧上昇
手術後は一過性に眼圧上昇が見られます(5~20%程度)。程度に応じて点眼・内服の追加を行いますので、術後も通院を継続してください。